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2008年7月10日 (木)

ノッてるね~ P.ヤルヴィのベートーヴェン !!

音楽は「再生芸術」と言われます。
絵画などと違って、ずっとそこに存在するのものではなく、演奏されて初めて音楽は存在します。
そして音が消えた瞬間から音楽も消えてなくなる。。。

正確には休止で音が鳴っていないときも音楽だし、曲が終わった瞬間の静寂も音楽の一部なのですが、まあ一般的に、音楽は鳴っている間だけに存在する芸術だと言われております。

だから音楽が聴き手に届く時には、必ず作曲家が書いた音符を演奏する人(つまり演奏家)が仲介します。演奏家というフィルターを通して作曲家の意図は伝わるのです。
少し言い方を変えると、音楽というものは、作曲家の作った筋書きを利用して演奏家を味わうもの、といっていいのかもしれませんね。
このあたりが音楽の幅広い楽しみ方ですね。

クラシック音楽にあまり多く接する機会の少ない人からよく、「演奏家によってそんなに違うの?」という質問を受けることがあります。

そんなとき私はよくこんなたとえ話をします。
「同じ推理ドラマの台本を使って、探偵役を田村正和が演じるのと、西田敏行が演じるのでは、ぜーんぜん違う探偵になっちゃうでしょ」

どちらも個性豊かな探偵になるでしょうねえ~。
それと同じようにバイオリニストにはそれぞれの歌い回しや音色があり、ピアニストのちょっとしたタッチの違いでも音の色彩と香りも、そして伝わる「音楽」も違ってきます。

それがオーケストラの奏でる音楽になると、変化はもっと増幅します。
音を出してるのは当然オーケストラの奏者なのですが、何十人もの個性集団が音を発するときに、指揮者というさらに強烈な個性が絡んで独自の音を出させようとするわけです。聴き比べなんかしてみたら、これほど面白いものはないのです。

さて、そこで今をときめくパーヴォ・ヤルヴィのベートーヴェンです。
未来の巨匠?いやいや今やすでに世界で引っ張りだこの大人気指揮者です。彼はエストニア出身の指揮者、巨匠メーネ・ヤルヴィの息子。
「親の七光」などという言葉がありますけど、本当の実力で勝負しなければならない世界ではそれは通用しません。オーケストラ奏者というその楽器に関する猛者集団と面と向かい合って、自分の意思を伝え従わせるのですから、そりゃ力量がもろに反映する仕事でしょう。
政治世界ではびっくりするくらい二世議員が多い。もちろん特殊な家庭環境の中で育って政治を学ぶ機会が多かったこともあろうが、、むしろ政治家というのは秘書をはじめいかに良いスタッフによって支えられているかによって「実力」が決まるのではないでしょうか。その環境づくりこそ、親のバックアップ(親の七光)が一番反映しやすいところではないかと思うのですが・・・。(もちろん七光ではなく立派な政治家もいらしゃいますけど!)

一方スポーツなどの真に本人の実力だけで勝負する世界では、世界チャンピオンの子が世界チャンピオンになった、とか、ホームラン王の息子がホームラン王になったなんて話は、まずないですよね(たぶん)。特に競技人口が多く底辺の広いスポーツでは、親子揃って一流選手なんてほとんどいないのです。相撲という特殊な閉鎖的(?)な世界においては、名大関の息子2人が揃って横綱になっちゃった例はありましたけど。

では音楽家では?
どちらも歴史に名を残すような親子は、やはりそれほど多くはありません。
私がすぐ思いつくのは、演奏家では名ヴァイオリニストのヤン・クーベリックと息子の名指揮者ラファエル・クーベリック、指揮者のエーリヒとカルロス・クライバー親子くらい?
他にもけっこういるように思いますけど、考えてみたら片方は大天才の巨匠でも片方はまあそこそこの名人どまりというのが多いようです。
そんな中で、現代最も「親の七光」ではなく「実力」で活躍してるのが、パーヴォ・ヤルヴィではないでしょうか。

あ~、ついつい前置きが長くなりました。この人ほんとにすごい人だな、ということを伝えたいための前置きでございました。coldsweats01

今日、昨年発売されたベートーヴェン交響曲第4番、第7番を聴きました。
オーケストラはドイチュ・カンマーフィルハーモニー・ブレーメン。若い才能が集まったとっても表現意欲に溢れた室内オーケストラです。

素晴らしいのは特に第4番。
こんなに微に入り細に入り、メロディの歌わせ方、楽器の受け渡し、音の絡み合い、アクセントやクレシェンドとディミヌエンドの使い分け、リズムの交錯、といった「こだわりぶり」を聴くのは、私はこの曲では初めての経験でした。
学問的にいえば、現代楽器によるピリオド楽器奏法とでもいうのでしょうか。
音量の幅、表現の幅の狭かった昔の楽器(ピリオド楽器)だからこそ、必要だった「強調する演奏法」を、音量も表現力も豊かな現代楽器で再現しているのです。
こういった演奏法の流れは、まあ最近の流行ではありますが、こんなに徹底して楽しく聴けたのは、とても珍しいです。

ヤルヴィがロマン派、近代・現代の曲を現代の大オーケストラで演奏したときの、集中力とオーケストラコントロールの確かさは、これまでCDなどで幾度か出会ったことがありましたが、ベートーヴェンでここまで「ハジけた」パフォーマンスを見せるとは、ちょっと驚かされました。
この曲が生まれた瞬間の、喜びと興奮が溢れてくるような、凝りに凝ったハイテンションの演奏なのです。

ちなみに第4番は2005年の録音。
第7番はなぜか2004年と2006年にまたがった録音。
きっと第7番の方は一度録ってしばらくして納得のいかなくなった部分を録り直し編集したのでしょう。もちろん随所に面白い表現が出てくるし、充分に気合いの入った演奏だとは思うのですが、第4番から続けて聴いてみると、妙におとなしい普通の演奏に感じてしまいました。

ちょっとそんな曲によってムラもありますけれど、フレッシュで個性的なベートーヴェンを味わいたい方は、ぜひこのエキサイティングなヤルヴィ盤を聴いてみてください。
「 しっかし、ノッてるね~happy01」と思わず拍手してしまう第4交響曲ですよ。

それにしてもベートーヴェン。どんな解釈でも映える凄い音楽を書いたものです。
「いつ聴いても新しい音楽だなあ~!」って思いました。
これも今日の、もう一つの結論です。

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