青春の歌 ドビュッシー ピアノ三重奏曲
ドビュッシー作曲 ピアノ、ヴァイオリン、チェロのためのトリオ ト長調
まだ聴いたことがない方は、ぜひ耳を傾けてもらいたい名曲です。
こんなに素敵な音楽が、作曲されてから100年近くものあいだ世の中に知られていなかったなんて、ほんとうにもったいない話です。
この曲が作曲されたのは、1879年から1880頃で、ドビュッシーは1862生まれなので、わずか17か18歳のパリ音楽院の学生だった頃の作品。
この曲の存在が知られたのは1977年。散在していた楽譜をまとめ校訂し楽譜が出版されたのは、1986年だそうです。
ドビュッシーというと、印象派を代表する作曲家で、ピアノ曲など聴いていると、メロディよりも音色の変化や音の配列の妙で聴かせる音楽だというイメージです。
まさに点描画のような技法で情景を描き、そこにある光景の雰囲気がモワモワと伝わってくるような音楽です。
ところがこのピアノ三重奏曲は少し印象が違います。
とっても愛らしいメロディ、、ひたむきな感情から流れ出るような心の歌、、若者だからこそ書けるとってもストレートな情感がしっかりと伝わってくる、そんな作品なのです。
ドビュッシーだけど、これはロマン派の音楽と言ってもいいのかも。音楽院時代のドビュシーは、きっとベートーヴェンやシューマン、メンデルスゾーンなどのピアノ三重奏曲をきっとたくさん聴いたり演奏したりしていたのでしょうね。
今回はついつい「青春の歌」なんて、ちょっと顔が赤くなるようなタイトルをつけてしまいましたけれど、一度聴いていただければ、初々しい感性に満ち溢れた佳作であることに、誰もが気づいてくれるでしょう。
第一楽章。
とても印象的なピアノの柔らかな導入です。続くヴァイオリンそしてチェロのメロディにも惹きつけられます。どんなものに対しても新鮮な好奇心を抱き、だけどとても傷つきやすい感受性をもった少年の自画像のような曲です。
第二楽章。
弦のピチカートに導かれて登場するピアノのなんと愛らしいこと。夢の中に出てくる無邪気な子供の頃の楽しい想い出・・・どことなく数え唄のような雰囲気も。
第三楽章。
広々とした草原に寝そべり、青い空に流れていく白い雲を眺めながら過ごしたあの頃。いつか夕日に染まっていく空を見つめながら少年が描いていた夢は・・・?
そして第四楽章。
いくら願っても叶わない夢もある。昔は一緒に無邪気に戯れていたあの娘。心の中にいつの間にか芽生えてしまった、これまでとは違う気持ち。心の中に湧き上がるひたむきな愛。だけどそれを伝えられないもどかしさ・・・そんなちょっぴり甘く切ない思いを味わいながら、少年は大人になっていく・・・
若い感性だからこそかけた作品だとは思いますが、こんな曲をどうして17,8歳の青年が書けてしまうのでしょう。
俗人ならば40歳、50歳になってはじめて言葉として表現できる若き日の心の中の情景を、天才というものは、青春の真っただ中で、すでにこんな美しく一つのまとまった音楽として表現してしまったのです。
天才とは、そういうものなのでしょうか・・・。
私が愛聴しているCDは・・・
●ルヴィエ(ピアノ) カントロフ(ヴァイオリン) ミュレ(チェロ)
●プレヴィン(ピアノ) ローゼンフェルト(ヴァイオリン) ホフマン(チェロ)
●トリオ・フォントネ
どれもそれぞれの角度から曲に光を当てた素敵な演奏ばかりです。
ちなみに上から、デンオン盤(クレストシリーズ)、タワーレコード(RCA)盤、ワーナー盤。
いずれも現在約1000円で手に入りますよ。
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