« 青春の歌 ドビュッシー ピアノ三重奏曲 | トップページ | 一目惚れ!~始まり方のカッコイイ曲~(交響曲編) »

2008年7月20日 (日)

コルンゴルトのヴァイオリン協奏曲にメロメロ… 

コルンゴルトのヴァイオリン協奏曲にもうメロメロです。

甘美な響きとメロディにうっとりと浸り「癒しの時間」を過ごしたい・・・そんなときは最適な曲じゃないかな・・・。

“快楽主義”という言葉がありますね。
いろんな側面から論じることのできる言葉だと思いますが、音楽の分野で“快楽主義”を説明しようとするなら・・・
「コルンゴルトのヴァイオリン協奏曲をワインでも飲みながらゆったりと聴くこと。そんな時間を過ごすことを無上の喜びとし、そういった快感を追い求め、行くことを生きていくことの原動力にさえしようとする考え方」
そんな風に言えるではないでしょうか・・・。

マーラーの耽美的な音楽を聴いている時も、同じような感覚になることがあります。
ああ、いつまでもこの世界に浸っていたい・・・後期ロマン派の音楽の特徴というか、それが最大の魅力でもあるのですが、一歩間違えば不健全な習慣性のある麻薬のようなロマンチシズムを味わいつくすことも、まさに「音楽の快楽主義」と言えるのでは・・・。
R.シュトラウスの作った官能的な響きに満ちた「薔薇の騎士」も、その分野の代表的な名曲ですね。
そういった観点からすればコルンゴルトのヴァイオリン協奏曲も、完全に後期ロマン派の魅力が最も色濃くあらわれた音楽だと思います。

ところが・・・この曲が作曲されたのは1945年。なんと第二次世界大戦が終わった年ではありませんか。初演は47年にハイフェッツが行ったそうです。
私たちの世代は、両親や祖父母から直接戦争中の話を聞かされています。終戦の年に誕生した曲だと聞いたら、現代に直接つながっている時代に誕生したバリバリの「現代音楽」というイメージです。
ストラヴィンスキーの「春の祭典」の初演より45年も後にこの世に出た作品なのです。
西洋音楽史をかじってみると、20世紀に入りシェーンベルクが12音技法を編み出したあたりで音楽の歴史は大転換して、まったく新しい世界に入ってしまったような錯覚に陥ります。
ですが、このコルンゴルドの曲を聴いていると、時代が現代になっても、ひたすら人間の内面を描くロマン派の音楽は脈々と続いていたのだということがよくわかります。

なんとこの曲、マーラーの未亡人、アルマ・マーラーに献呈されているそうです。
アルマの恋多き人生とこの曲想を同時に思い浮かべると、そのいきさつをぜひ知りたいものです。

第一楽章は、いきなりヴァイオリンソロから始まります。ヴァイオリン以外の楽器だったら決してサマにならない単純な音形のメロディです。ですがここには、ヴィブラートたっぷりのヴァイオリンだからこそ味わえる独特の官能的な響きがあります。応えるホルン。この瞬間からコルンゴルトの官能的で妖しい底なし沼に引きずり込まれていくのです.。

第二楽章は、さらに魅惑的な音楽に終始します。
夜景の摩天楼も遠くに見えるような、大都会の夜のしじまの中に漂うエキゾチックな香草の匂いと愛の場面・・・

第三楽章は、小気味よいヴァイオリンの名技を見せながらも、ロマンチックにのびやかなメロディを奏でていきます。オーケストレーションも見事。とても近代的な響きがします。ああ、そうか1945年の作品だったか・・・とやっとこのあたりで気づいたりするのです。

エーリヒ・ヴォルフガング・コルンゴルトは、1897年モラヴィア(現在チェコ)に生まれ、1957年アメリカで没。ユダヤ人だった彼は38年にアメリカへ亡命しました。そしておりしも黄金時代を迎えようとしていたハリウッド映画の作曲家としての職を得て、生き延びました。
作風は後期ロマン派だとしても、生い立ちはまさしく現代の作曲家です。

コルンゴルトは自作の映画音楽の主要なテーマを題材にして、この曲を書きました。
第一楽章は1937年作の映画「砂漠の朝」、第二楽章は1936年の映画「風雲児アドヴァース」、第三楽章は1937年の映画「放浪の王子」などからのメロディが使われています。

コルンゴルドの音楽を聴いていると、随所でジョン・ウィリアムスのスターウォーズやらETの音楽の響きがします。でもこれは逆で、ジョン・ウィリアムスがいかにコルンゴルトから影響を受けているか、ということです。極端な言い方をすれば、1970年代後半から1990年代あたりのスピルバーグやルーカスが作った映画の中の音楽の響きは、すでに1930年代、40年代にコルンゴルトが書いていたものを焼き直したものだと、言えるかもしれません。

私の愛聴盤は、ギル・シャハムのヴァイオリン、アンドレ・プレヴィン指揮ロンドン交響楽団のもの。
シャハムの甘美な音色でよく鳴るヴァイオリンはなかなかの聴きもので、プレヴィンの指揮もとっても素敵です。

プレヴィンはこの曲を3回も録音しています。
一回目は、パールマンとピッツバーグ交響楽団と。これはどうも録音がイマイチだし、パールマンの語り口はどうもおおらか過ぎて、どこか物足りなさが付きまといます。
二回目がシャハムとの録音。
そして三回目がたぶん蜜月時代の頃のムターとの録音。のっけからアブナイ雰囲気ムンムンのムターの毒にやられます。これ凄い演奏です。ただしちょっと疲れます。

他には初演者ハイフェッツの歴史的な録音もありますが、やはりこの曲は響きの良さが楽しめる録音でないとなあ~、と感じます。
ベンジャミン・シュミットという若いヴァイオリニストと小澤征爾ウィーンフィルのライブ録音はなかなか捨てがたい名演です。ヴァイオリンソロがオケの一員のようなイメージですが、オーケストラがとても充実した響きで立派に鳴っているので、気聴きごたえがあります。

なお、コルンゴルドの映画音楽のスコアを録音したものが、最近はたくさんCDになっています。
私が持っているのは、1977年録音のチャールズ・ゲルハルト指揮ナショナルフィルハーモニーの、当時コルンゴルドの名前を世の中に再認識しれたといわれるRCAの名盤の復活したもの。
第一曲目の映画「シーホーク」のテーマなど、知らない人が聴いたら「わっこれスター・ウォーズ作った人の音楽だよね!」ってたぶん言うでしょう。
ヴァイオリン協奏曲の原曲になった曲も、それぞれ収められています。原曲と聴き比べるのも楽しいですよ。

|

« 青春の歌 ドビュッシー ピアノ三重奏曲 | トップページ | 一目惚れ!~始まり方のカッコイイ曲~(交響曲編) »

音楽」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/518638/41909230

この記事へのトラックバック一覧です: コルンゴルトのヴァイオリン協奏曲にメロメロ… :

« 青春の歌 ドビュッシー ピアノ三重奏曲 | トップページ | 一目惚れ!~始まり方のカッコイイ曲~(交響曲編) »